教員の長時間労働は、部活だけが原因ではない
知ったかぶりでは許されない「学校のリアル」 第2回
◆平日で勤務時間が増加している仕事
文科省も土日に関しては「部活動・クラブ活動の時間が増加している」と指摘しているが、平日については部活についての指摘はない。平日で勤務時間が増加していると指摘しているのは、「授業」「授業準備」「成績処理」「学年・学級経営」だけである。
これには理由がある。2008年の学習指導要領(中学での完全実施は2012年度完全実施)で、文科省は「脱ゆとり教育」へと転換した。そして授業時間が1割増え、学ばなければならない内容も大幅に増えたのだ。そのため教員が授業に割く時間も、授業準備や成績処理、さらには学年・学級経営に割く時間も増えた。そこについては文科省も対処策を示すわけでもなく、多くのマスコミも触れない。
部活に問題がないとは言わないが、教員の長時間労働の原因になっている授業時間の増加と授業内容急増には触れないで、部活だけを責めるのは問題がある。だから、「長時間労働の解消なら、部活より授業に休養日を設けてはどうだろうか」という記事は、部活だけをスケープゴートにしないで、根本的な要因である授業時間のことも問題にすべきではないか、という主旨だった。それが、書き方が良くなかったのか、タイトルだけに引きずられたのか、先述したような意見をもらうことになったわけだ。
ただし、そうした意見の背景には、「授業時間なら、どんどん増やしていい」「授業時間以外のものはいらない」という考え方があるのではないだろうか。文科省は脱ゆとり教育で再び知識偏重主義へ舵を切ったが、それを受け入れる風潮があるということだ。
教員の長時間労働問題で部活がスケープゴートにされている状況は、脱ゆとり教育の知識偏重主義が加速され、受け入れられる土壌ができつつあることの表れでしかない。それは、教育にとっての危機でもある。
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